夜籠もりの下弦は恋を知る
「ところで、その着物は徳子ちゃんから借りたの?」
「あ、はい!そうです」
「やっぱり!私の時もこうなっちゃったから、着物借りたのよ。私はピンクを着たけど、潤ちゃんの色もいいわね。とっても素敵よ」
(麗花さんの時も宴会したのか…)
どんだけ宴会好きなんだ!と思いつつ、着物の話題で場を繋ぐ。
「そうですよね。私なんかが着るにはもったいないくらい、素敵な着物なんですよ」
「あら、私は潤ちゃんも含めて素敵と言ったのよ?」
「へ!?」
「着物自体の美も確かに必要だけど、やっぱり最終的には着る人間によって善く悪くもなるからね。…そうだ!さらに素敵になって重衡さんを驚かせましょうか!」
「はい!?ちょっ…麗花さん!?」
どこからともなく化粧道具を登場させた麗花。
重衡が大広間に来るまでのわずかな時間、潤は麗花の手によって薄く化粧を施されたのだった。