夜籠もりの下弦は恋を知る



「も、もう、結構です!!麗花さ~ん!!」

「ダメよ!後は口紅だけだから!」

じっとして!と言われた(脅された)潤は泣く泣く従う。

「潤さん、お待たせしました」

そこに、重衡が足音もたてずやって来た。

「あ、重衡さん、もう少し待っててね」

言いながら、麗花は最後の仕上げと言わんばかりに、潤の唇に軽く紅をさした。

「はい完成!」

自分の方を向いていた潤をクルリと回転させて重衡に向かい合わせる。

「紫の蝶ですか…。とてもよく似合ってます」

うっとり見つめてくる重衡に、潤は恥ずかしさから下を向いた。

「俯かないで。その花の顔(カンバセ)をよく見せて下さい」

潤の両頬に優しく手を添え、ゆっくりと上向かせる。


そして、重衡と潤の視線が合わさった。


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