夜籠もりの下弦は恋を知る
色白で端正な顔が近づいてくる。
(ひゃあ!!やめろおお、このキス魔がぁ!!)
すると…。
「やめんかいぃ!!!」
スパーンとキレのいい音がした。
「痛っ!!」
どうやら何かで後ろ頭を思い切り叩かれたらしい。
重衡が後頭部を押さえ、少し涙目になる。
「全く、宴の席で破廉恥な!そういうことは二人きりになってから、もしくは初夜にしろ」
「維盛(コレモリ)!?」
(えと…誰?同年代っぽいけど…)
潤が維盛と呼ばれた男子を凝視していると…。
「重盛(シゲモリ)さんの息子さんよ」
麗花がこっそり説明してくれた。
「重衡、少しは自重しろ」
維盛が手に持った扇子を遊ぶように弄りながら忠告する。
(そっか、重衡さんを撃退した武器は扇子だったんだ)
「酷いな維盛、俺のせいじゃない。彼女が押し倒してくれと誘惑してくるんだから、不可抗力だろう?」