夜籠もりの下弦は恋を知る

「したいしたい!おいで~」

潤の手招きに恥じらう五歳、知章。

(あらら…一筋縄じゃいかないか)

ちょっと諦めかけていると…。


「俺にしません?」


「ひゃああ~!!!」

重衡に後ろから優しく抱きしめられた。

「抱き着くなぁ~!!」

暴れてみる。

「知章より俺をかまって下さいよ」

少し怒ったように言う重衡。

「え~。知章くんの方がカワイイし、重衡さんが拗ねることないでしょ」」

すると、離したくないと訴えるように、さらに強く抱きしめてくる。

「大きくなった前世の知章を知っているので、五歳といえども許せません」

そして鋭い視線で知章を威嚇する。

(おい!罪のない知章くんを睨むなよ!)


「フッ…大人気ないな」

父親である知盛が息子を麗花の膝から抱き上げた。


< 52 / 173 >

この作品をシェア

pagetop