夜籠もりの下弦は恋を知る
「知章は昔、俺を庇って死んだ」
世間話でもするように知盛が話し出した。
(そのわりには、内容重くない…?)
みんな黙っているので、知盛が言葉を続ける。
「一ノ谷の戦いで、俺はこいつの死とひきかえに生き延び、ひどく自分を呪った。自分の子供よりこの命長らえて何になると…。だから現世では、父親としての務めを果たしたい。誰よりも、幸せにしてやりたいんだ」
知章の額に軽く口づけるその表情は、父親のそれ。
「知盛さん、良いお父さんですね…!」
潤が感動して瞳をウルウルさせていると、
「では、佐殿。受け取れ」
「へ?」
彼はひょいと知章を潤の膝にのっけた。
「知章も、俺より年頃の女子高生に抱きしめられた方が喜ぶ」
(……知盛お父さーん?息子の幸せ計画を何か間違った方向で進めてません…?)