夜籠もりの下弦は恋を知る

「兄さん、知章はこれ以上幸せにならなくて結構。潤さんの腕の中は俺だけの聖域なんだから………退け」

重衡は先程よりも厳しい眼差しで幼い甥っ子を睨みつけた。

しかも、すこぶる不機嫌な低音で「退け」を言い放つ。

おじの殺気に恐怖で固まる知章。

「ああ、もう!!わかったから、子供相手にガン飛ばすなイジメんな!!ごめんね知章くん」

潤は知章を麗花に返すと重衡に向き直った。

「お願いだから子供と張り合わないで!見苦しい!」

「見苦しくても構いません。貴女は俺の妻ですよ?嫉妬は当然でしょう」

真剣な顔でそんなことを言うものだから、困る。

(くそ~!顔がいいだけに思わずポッとなる自分が憎い!)

これじゃ怒るに怒れない。


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