夜籠もりの下弦は恋を知る

「自分のことを棚に上げてよく言うな、重衡。知ってるぞ?お前が転校した本当の理由」

維盛が扇子で開いたり閉じたりを繰り返す。

「本当の理由…?」

潤が維盛の発言に興味を示したようだ。

彼の方に身を乗り出して尋ねる。

「何ですか?成績悪かったとか、大規模なケンカしたとか?」

「俺は成績優秀、品行方正な生徒でしたよ?」

重衡が良い印象の自分をアピール。

「成績優秀は当たってるが、品行方正が違うな」

維盛は綺麗な唇をいやらしく歪めて笑った。


「重衡は女教師に手を出して退学になったんだ」





「…………」


すぐには理解できなかった。





「………え?」



やっとのことで音声を口から発する。

(それって…まさか…)


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