夜籠もりの下弦は恋を知る
翌日、もやもやした思いを吐き出すため、輔子は夫の兄である知盛の屋敷に向かった。
「重衡様はもう、私からお心を離してしまったのでしょうか…?」
御簾ごしに知盛と対面し、重衡のことを尋ねる。
「もしや、子がなかなかできないから、とか…?」
不安で不安で仕方がないといった彼女の声に、知盛は「やれやれ、あの愚弟め」と軽く溜息。
「妻を娶って少しは落ち着いたかと思いきや…。すまないな、佐殿。私もあいつの夜の動向までは把握していないが…おそらく、親しい女房のもとで遊んでいるのだろう。そなたに飽きたのではなく、単に女癖が悪いだけだから気にするな」
知盛の慰めも、どこか虚しく聞こえる。
輔子は「はい…」と答えながらも、心の空洞を切実に感じたのだった。