夜籠もりの下弦は恋を知る
「『じゅん』じゃない!『うるう』だー!!」
反射的にツッコミを入れていた。
よく読み方を間違えられるので、この手のツッコミだけは素早い。
「へえ、『うるう』と読むんですか」
やって来たのは話題の人だった彼。
(げっ!あいつ、さっきのチカ…いや、変態?まあ、どっちでもいいけどなぜここに…!?)
「おっと、アタシは退散するか」
邪魔者は消える、というように離れていく揚羽。
「ちょっと…!揚羽!」
(二人きりなんてヤダよー!!)
「潤さん。はい、忘れ物」
彼が差し出したのは潤の単語帳。
「ど…どうも」
ぎこちなくそれを受け取ると、彼が話し出した。
「さっきはいきなり、すみませんでした」
(あ、罪悪感はもってたんだ)