夜籠もりの下弦は恋を知る
重衡の言葉には独占欲と嫉妬が入り混じっている。
それを感じ取った輔子はキュッと夫の着物にしがみついた。
「私には重衡様だけでございます。蜘蛛の巣になど、かかりませぬ」
他の男になどひっかからないし、なびかない。
心に想うのは重衡ただ一人。
「輔子…」
徐々に二人だけの世界に突入していく彼らに、知盛が最後のアドバイスをした。
「重衡、解決法を思いついたぞ」
「兄上?」
「そなたの悩みを全て、打ち明けてしまえ。さすれば、佐殿も納得しよう」
「な!?打ち明けるのですか!?」
「佐殿を泣かせたくないのら、そうすることだ」
それだけ言うと、知盛は自分の妻と共に奥の部屋へと消えていった。
知章はすでに別の場所へ行ったのだろう。
庭には誰もいない。
重衡は輔子と二人きりであることを認識し、遠慮なく話を始めた。