夜籠もりの下弦は恋を知る
「私も~。あれ?でも確か、先帝身投もやんなかったっけ?」
潤が記憶をたどるように考えていると、揚羽がズバリ結論を出した。
「復習させたいんでしょ?たぶん」
「復習か~」
ぶつぶつ言いながらも潤はシャーペンを握った。
そろそろ休み時間も終わる頃だ。
五分休みは短い。
(えっと…先帝身投っていうと…壇ノ浦(ダンノウラ)での合戦か)
潤は一文目を読んだ。
『源氏の兵者共(ツワモノドモ)、すでに平家の船に乗りうつりければ、水手梶取(スイシュカンドリ)ども、射ころされ、きりころされて、舟をなほすに及ばず、舟(フナ)そこにたはれふしにけり。』
何やら危険な描写がなされている。
(うわー、これってザックリ訳すと、源氏の軍が平家の船に乗り移って暴れたっていうことだよね…)