夜籠もりの下弦は恋を知る
前世の記憶を取り戻しつつある潤にとって、これを読まされるのは何だか複雑な気分だ。
微妙な心境を感じていると、次の文に知ってる固有名詞を発見した。
『新中納言知盛卿、少舟に乗て御所の御舟に参り…』
(はわ!?知盛さんがご登場!?)
彼は平家の世もこれまでと覚り、あわてふためくことなく船の掃除を始める。
(立つ鳥跡を濁さず的な感じ?)
不意に女房たちから戦況はどんな感じかと尋ねられて、「めづらしきあづま男をこそ御覧ぜられ候はんずらめ」と答える。
(珍しいあずま男…東国の男のことか。ようするに源氏の兵のことだね。を見られますよ~って言ってるのか…。う~ん、余裕だな~)
ここまで訳して、ふと潤は「あれ?」と思った。
(そういえば、私…この光景を、知ってる…?)