夜籠もりの下弦は恋を知る
そこでハッとした。
(そうだよ!私もこの場所にいたんだ!!ここに「御所の御舟」って書いてあるもん!)
「御所の御舟」とは、先帝――すなわち安徳天皇が乗っていた船のことだ。
(たしか、私…ちっちゃかった安徳天皇の教育係として乳母やってたしなー)
重衡との間に、前世の潤は子供をなさなかった。
そのため乳母といっても母乳をあげるのではなく、主に教養を教え込む役目を任されたのだ。
(あ!思い出した!安徳天皇が海に身を投げてから、私も死ぬつもりで海に飛び込もうとしたんだよね)
しかし、助けられてしまった。
(源氏の兵に邪魔されて…!)
甦った記憶にイラッとする。
(ああ~、もう!!なんかこの先の文章読みたくない!!)