夜籠もりの下弦は恋を知る
平家の人々が次々と海に沈んでいくシーンなど、思い出したくもない。
(はあ…。次の能登殿最期だって…)
ざっと目を通した潤はある箇所を見て「ん?」となった。
『大納言の佐殿は、内侍所の御唐櫃(オンカラウト)をもて海へいらんとし給ひけるが、袴の裾をふなばたに射つけられ、けまとひて倒れ給ひたりけるを、つはものどもとりとどめ奉る。』
(この大納言の佐殿って…)
昨日、知盛が自分のことを佐殿と呼んでいたことを思い出す。
「私だ!!!!!」
思わず大声を上げていた。