夜籠もりの下弦は恋を知る
揚羽が教室のドアの方を見た。
「何?」
ドアは開け放してあり、廊下が丸見えになっている。
「ほら、廊下にあんたの彼氏候補が」
「…あ!」
潤も気づいた。
女子に囲まれながら自分達のクラスに向かってくる重衡に。
「モテるなー。あの男子」
「うーん。顔は良いし、無条件で女子に優しいからねぇ…」
「潤、あんたそれで良いの?ヘラヘラしてると、いつの間にか浮気されて最終的にはポイされちゃうよ?」
ズバッとものを言う友に、潤は苦笑い。
重衡の性格を考えると、もし本気で好きな相手ができたなら、真正面から自分に向かって終わりにしようと言ってくるだろう。
そういうところは、案外ハッキリキッパリしている。
(浮気されてポイか…。そうだよね…。よく考えれば、私以外を好きになるってこともありえるよね…)