Diva~見失った瞬間から~
「うわっ!?な、何で泣いた!?」
失礼すぎる。何だこの人。
「社長。ソイツはテンの連れですよ。」
西谷さんが適当そうに私を紹介した。
「…………社長…?」
この人が?
「テンの?あ、この子が!」
真っ黒なスーツを着こなす長身。
実際に何歳なのか分からないけど
若々しさを感じさせるその顔の作り。
「初めまして。ここの事務所の社長の
及川藍雅(オイカワ アイガ)ってゆうんだ
…けど。」
帰りたい帰りたい帰りたい。
でも、
ここで無視して帰るのは失礼すぎる。
てか、社長だし。
「………相澤、奏乃です。」
自己紹介だけして、帰りたい。
「………うん。奏乃…ね。うん。」
……ここの事務所の人は初対面だろうが
名前の呼び捨てで呼ぶのね。
「…とりあえず…涙を拭こうか。」
「………え…うわっ。」
ギュッと、頬に圧力を感じた。
痛い痛い。ちょ、何。
「ん、ホラ。眼鏡外して。」
社長さんは私の眼鏡をパッと外す。
うわ、見えない。
「………?君は…。」