Diva~見失った瞬間から~
歌が聞こえる方は、
公園に遊びに来る子供が絶対に
行かないであろう草むらの先から
綺麗に、美しく響いてきている。
『―――…。』
段々、大きくなってくる。
あれ、コレ…男の人の声だ。
聞こえてくるのは、透き通る男声。
―――見えた。
歌声の元であろう、
男性の後ろ姿が見えた。
草むらを抜けた先は、
月明かりを浴びる小さな広場があった。
月明かりに照らされて、
その男性の黒髪がゆらゆらと
揺れているのがしっかりと見える。
歌声は、止まらない。
―――っ…。
ここまで来て、今さら私は気づく。
何で私はここに来た?
何で歌声なんかを追いかけた?
もう歌に、
音楽に関わらないと決めたハズ。
私と"彼女"の心に、誓ったハズ。
ここに居ちゃ、いけない。
……帰らなきゃ。
後ろを振り向き、帰ろうと足を動かす。
こんな時に限って、私はドジをする。
《ガサッ》
音を、立ててしまった。