Diva~見失った瞬間から~
「カナ。熱は?」
ゆっくり、ゆっくりと
私は葉月君に近付く。
「………カナ?」
葉月君の声が聞こえないワケじゃない。
ただ…ピアノを弾いていた
彼に近付きたかった。
「今の……曲…。」
何で、あなたが弾けるの?
何で、あなたが知ってるの?
「……あぁ、ごめん。カナが眠る直前に
ピアノの蓋って言ってたから。」
ピアノの…蓋?
「蓋を閉めて欲しいって、言ったろ。
だから、
ピアノがあるこの部屋に来たんだ。
そんで、
ピアノの蓋を閉めようとしたら…。」
葉月君はピラッと紙を私に見せた。
「………あ…。」
それは、紛れもない…。
「この楽譜を見つけて。
勝手に使っちゃ悪いと思ったけど…
弾いてみたら止まんなくてな。」
葉月君が手に持って見せたのは、
紛れもない…あの曲の楽譜だった。
「この曲…
聴いたこと無いけど良い曲だな。」
「………っ…。」
駄目…駄目だよ…っ…。
その楽譜…その曲は…。
「曲名も歌詞も付いて無いけど、
カナが作った曲か?コレ。」
やめて…。