Diva~見失った瞬間から~
「……その…その曲は…っ…。」
2度と聴くことの無いハズの曲。
2度と演奏することの無いハズの曲。
私が、"彼女"に贈るハズだった。
歌詞と言う名の
言葉を付けて歌にするハズだった。
でも………。
「……間に合わなかった…曲…なの…。」
作りかけで、未完成で。
完成することの無い曲。
「……カナ?」
何で私は、
葉月君にこんなことを言ってるの。
涙は出ない。
きっと枯れてしまったんだ。
別に、困りはしないだろう。
これから先。私の未来に
あれ以上の哀しみは無いだろうから。
「カナ。」
ヒヤッ…と
私の頬に冷たいモノが触れた。
床に向けていた視線を上げると
そこには…
綺麗で儚げな表情の葉月君が居て。
頬に触れたのは、葉月君の手だった。
前もあったかも…こんな状態。
「寝なよ。熱、下がってないし。」
「…………。」
大きな手が、私の頬を優しく撫でる。
「………はづき…君…。」
私は、無意識に
その大きな手に私の手を重ねていた。