Diva~見失った瞬間から~
「―……。」
途端に、歌声は止まった。
「……誰。」
無機質、でも響く声に呼び止められた。
……まずい。バレた。
出ていった方が、いいのだろうか。
「…出てきてくんない?」
怒っているのか、呆れているのか。
どんな感情を抱いているのか
分からない声でその男の人は言った。
私は、帰ろうと後ろに向けた身体を
また男の人の方へ向ける。
……まだ、彼はあちらを向いている。
顔は、見えない。
仕方ない。勝手に来た私が悪い。
私は意を決して彼の方へ足を運んだ。
彼の歌声が無い今、
私の足音だけが鳴り、
そして夜空へ消えていく。
「……、誰。」
……言った方がいいのか。
でも相手は赤の他人。ぶっちゃけ嫌だ。
私は顔を俯いたまま、考える。
出来れば、顔も見せたくないから。
「…顔くらい見せろよ。」
「…っ…。」
いきなり、顎を掴まれ上を向かされた。
必然的に、彼と目が合った。
…"彼"は、とても綺麗な顔をしていた。
「……。」
絶句し、見惚れてしまうほどに。