Diva~見失った瞬間から~
「優杏が、寂しがってんだけど。」
「……えっ…と。」
何て言おうか。
音楽に関わりたくないから?
音楽の才能が無いから?
ううん、
こんな言葉で納得する人じゃない。
何より…
この人にそんなことを言いたくない。
葉月君と音楽を作っている、この人に。
「……奏乃さぁ、社長と知り合い?」
「……っ…。」
思わず心臓が跳ねる。
違う。私はあの人を知らない。
ただ、
あの人が"前の私"を知っているのは
この間、会って分かってしまった。
「どう見ても様子がおかしかっただろ。
社長と喋ったら
途端に帰りたがってたし。」
「………。」
実際、あの時の私は社長さんが
来てなくても帰ろうとしてた。
でも、ここでそんなことを言っても
意味が無い。何も変わらない。
「………奏乃、俺らの曲を聞く時。
自分がどんな顔してんのか分かる?」
「………ぇ…。」
西谷さん達の曲を聞くとき…?