Diva~見失った瞬間から~
病院に着いて、連れてこられたのは
手術室でも病室ではなかった。
霊安室。
幼い私にはその漢字は読めなかった。
暗くて、肌寒い部屋だった。
父と母はその日…会社の取引先から
自身の会社に帰る途中だったらしい。
人の命はとても脆かった。
「……何、これ。」
目の前に居たのは、微笑む父でもなく、
私の名を呼んでくれる母でもなかった。
白く薄っぺらい布を被せられた
2つの体。
その布の下には、
蒼白い顔で瞼を堅く閉じる
見慣れた父と、母の顔があった。
眠ってない。
息をしていない。
笑わない。
私を見てくれない。
私の家族は死んだんだ、と。
その冷たい父の頬に触れて初めて、
幼い、
僅か10歳の私は理解をしたのだった。