Diva~見失った瞬間から~

救急車のサイレンの音も、

私には聞こえない。

ただ目を堪えて、

あなたを見ているだけ。


「急いで!呼吸が!!」

たまに大きく揺れる救急車。

あなたの顔に、笑顔は無かった。


「どうしてここまで

放っておいたんですか!?」

病室に運ばれるや否や、私と鈴は

白衣に身を包んだ医師に怒鳴られた。


「もう、末期だ…。手術しても遅い…。」

鈴は、ガンだった。それも重度の。


「………り、ん?」

ねぇ、知ってたの?


「ごめんね…、カナ。」

私を切なげに見る

彼女の口角は上がっている。


無理矢理、笑ってるの?

もうあなたは諦めてるの?


「……!許さない!!鈴が死ぬなんて、

私は絶対に許さないからっ!!」

止めて。止めて。

終わらないで。終わらせないで。


消えないで。

私の道を照らしてよ。導いてよ。


「………カナ…?」

私が聞きたいのは、

こんな弱々しい声じゃない。


もっと、元気で。明るくて。

私の影なんて一瞬で照らしてくれて。


「あのね…守って…欲しい…の…。」

私の心を、暖めてくれる…。


「………りんっ…!」




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