Diva~見失った瞬間から~
強がる…?
その言葉に私は無意識に反応した。
葉月君は、気付いていたのだろうか。
私が、必死に強がっていたって。
私は、葉月君の背中に腕を回していた。
そして、
彼の背中の布をぎゅっと握っていた。
そうだ………そうだよ…。
私は…。
「怖…かった……。」
「……ん。」
自分でも情けない程、声が震えていた。
「ホントは歌いたかった…っ…。
でも…っ、鈴が居ないから…っ…。
私には…1人でっ…ステージに立つ
勇気なんて無かったの…。」
「……ん…。」
歌いたかったんだ。私は。
でも、鈴が居ないと出来ないって、
思ってた。
私を音楽に導いてくれたのは、
鈴だったから。
鈴が居ないと、
ステージに立つことも出来ない。
私は、弱い。
「でも…弱い自分は認めたくなかった。
鈴の願いを叶える…
そのことにひたむきになれる、
強い自分が欲しかったから…。」
自分を出してしまったら、
弱い自分を"私"にしてしまったら、
きっと"私"は崩壊してしまう。
"相澤奏乃"は、鈴の願いを叶えるために
生きているのだから。
もう私は、"ケイ"じゃないから。
逃げ道はもう、私には無い……
私には…
"相澤奏乃"しか残ってないから。
「分かってた…分かってたよ。
自分が"オカシイ"なんて、分かってたよ。
時鶴に…何度も、言われたもん……。」
『奏乃…もう、良いんじゃないかな。』
『奏乃、無理しないで…。』
自分の異常なまでのその"依存"は、
どんどん私をオカシくさせていた。
いつの間にか私は、
鈴が色付けてくれた世界を
自らまた白黒へと後退させていたのだ。
「私は、ただの自己中だったんだね…。」
空回り所じゃ、ないじゃない。
「私……最低だね……。」
ホントに。最低。