Diva~見失った瞬間から~
「…葉月君は、さ。」
「ん?」
カフェを出て、
7月のちょっと湿っぽい外を歩く。
夜は、風が少し出る。
まだ7時くらいだけど。
「何で、人にそんなに優しく出来るの?」
駅まで送ってく、
と言ったのかと思ったら、
何か電車までちゃんと乗って、
私がいつも降りる駅で
葉月君も一緒に降りた。
どうやら家まで送る気だったみたいで。
いいって言ったのになぁ。
「優しい?俺が?」
あれ、もしかして自覚なし?
「うん。葉月君が。」
自覚なしでこんなに紳士なんて、
ホントに葉月君は凄い。
「俺は別に、優しくねぇけどな。」
「え、そんなことないよ。」
つか、んな訳無いでしょ。
「自覚してないだけ…。」
「優しいって、思うなら。」
葉月君は、私の言葉を遮った。
そして立ち止まり、
私を上から見下ろした。
背、高いな。首痛くなるかも。
「カナが、
俺が優しいって、思うならさ。」
真横に立つ葉月君は、真っ直ぐに
その透き通るような瞳に私を映す。
「それは、カナにだけだな。」
「…………へ…?」