Diva~見失った瞬間から~
「………………はい?」
え、何。何て言った?
「葉月は声が出ない。
碧真も、翡翠も、
今からじゃ間に合わない。
当然、私もね。」
いや、それは分かるけど。
「今この状況で、私達の周りに
全曲歌えるのは奏乃しか居ないの。」
真剣な眼差し、
そして声で優杏は言った。
「でも、でも…私は…。」
何て返せば良いんだろう。分からない。
歌うの?歌わないの?
何が1番良い選択なのか、分からない。
「お願い。奏乃。」
優杏が頭を下げてきた。
「私、
今日のライブを中止にしたくないの。
今日来てくれた人達のためにも。」
真剣身が伝わったと言うか、
いつもの優杏からは
想像できない空気だった。
「俺からも、頼む。」
「俺も。奏乃、歌ってくれ。」
碧真君も、翡翠君も。
皆、私なんかに頭を下げる。
私は、あなた達に頭を下げられるような
立場の人間では無いと言うのに。
「………な、んで、私…なの?」
やっとの思いで
出たのはそんな言葉だった。