Diva~見失った瞬間から~
「皆さん、今日はこんな暑い中。
俺達Canzoneに
会いに来てくれてありがとう。」
始めにお客さんに話し掛けたのは
碧真君。
お客さんの方からは「セイー!」って
熱いお姉さん達の歓声が聞こえる。
「今日さぁ。始める前に、
言わなきゃいけねーことがあんだ。」
目の前に居る大勢の人達に、
碧真君はハッキリと言葉で伝える。
「メインボーカルのテンなんだけど…
今日コイツ、
風邪のせいで声でねぇんだ。」
瞬間、会場中がザワついた。
そりゃそうだ。
お金払ってライブに来たのに、
もしかしたらそのライブで
歌が聴けないかもしれないんだから。
「そこで。今日のメインボーカルの、
交代をお知らせする。」
会場内のザワつきは大きくなる一方。
Canzoneのテンの歌声が聴けない、
それだけで大半のお客さんは
ガックリ肩を落としている様子だった。
「そんなに落ち込むなって。
まずは、聴いてやってくんね?
それから、
アイツのことは紹介すっから。」
え、私は歌ってから紹介されるの??
「待ちに待った日なんだから。
盛り上がんなきゃ意味ねーよ?」
そう言う碧真君は凄く楽しそう。
まだ演奏してさえいないのに。
この人もこの場所が好きなのかな。
「よし!じゃあ行くぞー!」
ドラムの前に座る
翡翠君が掛け声を発した。