Diva~見失った瞬間から~
……来る。
私はお客さんからは見えないこの位置で
大きく息を吸い込んだ。
《カンッカンッカンカンカンッ》
始めは、このCanzoneの、デビュー曲。
私が歌ったら、
皆はどんな顔をするのかな。
「―――…。」
私の声は音となって、
それに言葉が付いて。
大きな会場の中に響き渡って。
そして、
余韻を残しながら消えていった。
「―――…。」
私、歌ってる。"あの頃"と同じ、
私の声が歌になってる。
「―――…。」
鈴…。私、歌えてるかな。
あなたの隣では無いけれど、
この場所も私にとって大切な場所。
「――……。」
1曲目が、無事に終わった。