Diva~見失った瞬間から~
私が歌い終えると、
会場は静まり返っていた。
「ソウ。こっち。」
マイクを入れずに、
碧真君が私を小声で呼ぶ。
彼がこっち、
と導くのはステージの中心。
メインボーカルが立つ所だ。
《コツッ…》
私は、
そこを目指してステージ上を歩く。
《コツッ…》
音響の良い会場は、
私の足音さえも響かせる。
《コツッ……コツッ…》
そして、ステージの中心に辿り着く。
そこから見渡した眺めは、
やっぱり、
3年前と全然変わっていなくて。
「1曲目を聴いてみて、
どうだったかな?」
後ろから、優杏の声がする。
「テンに負けないくらい良い声でしょ?
てゆうか、テンより良い声かもー(笑)。」
気軽にお客さんに話し掛ける優杏。
「皆…この子の名前、知りたくなぁい?」
「シン…お前なぁ。」
優杏を止める翡翠君。
「………し、知りたいっ!!」
客席から聞こえた、
1つの可愛らしい声。
「私も!」
「俺も俺も!!」
「ウチもー!」
皆その可愛らしい声に釣られて、
どんどん大きな声を上げる人が増える。
気が付くと、会場は開演直後の時よりも
凄い歓声に包まれていた。