Diva~見失った瞬間から~

楽屋にて。


「奏乃ぉーーーーーッ!」


「うわぁっ!」

皆が楽屋の中に入り、扉を閉めるなり

優杏が抱き付いて来た。


「ヤバいよー!

めっちゃ歌綺麗だったよー!!」


「ちょっ、うぇ、ふぇ、ふゎっ。」

顔を押し付けて

頬擦りしてくるもんだから、

私はまともに喋れない。


「ありがとう!奏乃!!」


「え?」


「歌ってくれて、本当にありがとう!」

驚いて声が出なかった。


優杏が突然笑顔で

私にそんなことを言うから。


「そ、そんな…私は。」


「「奏乃。」」


「え?」

後ろから、碧真君と翡翠君が

2人で声を合わせて私の名前を呼んだ。


後ろを振り向くと、端正なその顔に

温かな微笑みを浮かべていた。


「優杏の言う通りだ。

歌ってくれて…本当にありがとう。」


「ひ、翡翠君…そんな…(汗)。」


「奏乃。言わせてやれって。

俺もスゲー感謝してるから。

今回のライブを無事終えられたのも、

奏乃がボーカルとして

歌ってくれたからだし。」

……面と向かってお礼を言われると、

何か妙な気恥ずかしさに見舞われた。


でも、私も言わなきゃ。


「…優杏。碧真君。翡翠君。葉月君。

今日…、私を舞台で歌わせてくれて、

私を導いてくれて…ありがとう。」

1ミリでも良い。この感謝の想いが、

少しでもあなた達に伝わると良いな。


凄く凄く、感謝してるから。





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