Diva~見失った瞬間から~
「…何で泣くんだよ。」
「……っ、泣いてない。」
私の意志とは逆に
涙は私の頬を伝ってくる。
泣いてない、なんて嘘。
悲しいって言いたいのに言えない、
馬鹿な私の意地。
《コツッ…コツッ…》
靴が床に落ちる音がする。
次第に碧眞の気配も
次第に近くなる気がして。
近付かないでって、思った。
泣いてる私の顔は凄く不細工だから。
「………優杏。」
「………何。」
自分の醜い顔を碧眞に見せたくなくて、
私は俯きながら言葉を返す。
「……ゃ…。」
ふわり、
と私は心地良い温もりに包まれる。
鼻を掠めるのは、大好きな香り。
「言いたいことがあんなら、言え。」
それは、酷くぶっきらぼうで。
「お前の言いたいことが
全部俺に分かるわけねぇだろ。」
淡々としていて。
「俺は、超能力者じゃねぇんだよ。」
けれどとても温かく、優しい声だった。
「……碧眞が悪いんじゃないし…。」
言ってしまおうか。
「私が…いつも…。」
私が嫌っている"私"の存在を。
「可愛くないから……。」
私が抱く、大きな不安を。
「…素直になれないから……。」
あなたにだけ抱く、想いを。
「…………碧眞は…、こんな、
可愛くない私なんて…嫌いでしょ?」
言っていて、涙が流れた。
素直になりたかった。
私はただ碧眞と……奏乃と葉月みたいな
仲の良いカップルになりたかった。
「……それだけか。」
頭上から降りてきた声は低かった。
もう、駄目なのかな。