Diva~見失った瞬間から~

「蒼空君誕生日おめでとうっ!」


「うわぁっ!?」

私が考える間もなく、

時鶴は蒼空君に抱き付いた。

………あ、こうなるのか。成る程。


私も蒼空君に近寄った。


「蒼空君。おめでとう。」

今の状況で私が言うのも

どうかと思ったけど。

まぁ良いでしょ。


「お、奏乃。ありがとう。」

時鶴を抱き締めたまま、

私にニコリと微笑み、

お礼を言ってきた蒼空君。


………イケメンだなぁ。仕草が。


「あれ?蒼空君っ。天瀬君は??」

時鶴が蒼空君の胸から

パッと顔を上げて言う。


「え、アイツは…。」


「普通に後ろに居るんだけど。」

蒼空君の後ろから、響く男声。

あれ、この声…

やっぱり聞いたことある…。


その人は蒼空君の横からスッと

リビングに入ってきた。


……………あ。


「あれ、この間の?」

この人…この人!


「あれ?天瀬君、

奏乃のこと知ってるの?

まぁ良いや。奏乃、この男の子はね、

蒼空君と同じクラスの

友達の天瀬葉月君。」

時鶴はスラスラと彼の他己紹介をした。


そうだ、この人…天瀬って言うんだ。

そう言えば時鶴が口々に

天瀬君って言ってた。


今思えば変な違和感を感じていたのは

その名前を聞いた時ばっかだったかも。


「え、奏乃と葉月、知り合いなのか?」

蒼空君が私達に聞いてきた。


「あ、まぁ。

それより、パーティーしねぇの?」

天瀬さんは、

蒼空君の問いを軽く受け流すと

リビングのテーブルを見てそう言った。


「あっ!そうだね!

蒼空君食べよ食べよっ!

さっき奏乃と一緒に準備したんだよ!」

時鶴が思い出したように蒼空君に言う。


「ん?あぁ。ありがとう。」

時鶴に急かされて、

蒼空君はソファに座る。

それに続いて時鶴が蒼空君の隣に座り、

私と天瀬さんはその向かいに座った。


……隣かよ。妙に気まずいわ。


「じゃあっ!!改めて…

蒼空君、誕生日おめでとうございます!!」

時鶴が満面の笑顔で言った。





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