Diva~見失った瞬間から~
ぎゅうっと、お腹が優しく
締め付けられて、そしてほぼ同時に
背中に感じる温もりに、
自分の今の現状を理解した。
楓に、抱き締められてる。
「歌音、帰ろう?」
耳元で楓の声が聞こえる。
鼓膜の奥まで響くその声に反応し、
私の頬は自然と
熱を帯びるのが分かった。
「私の歌音ー!」
「あ、桜。
俺、黎琉がチョコ持った女子から
攻められてるの見たぞ。」
「げっ…Σ( ̄ロ ̄lll)!楓てめぇ…!」
「え!?!?」
黎琉は顔色が一気に悪くなり、
桜はその黎琉に勢いよく向き直った。
「黎琉!まさか貰ったの…!?」
「貰ってねぇって!!断ったって!!」
疑う桜と、必死で弁解する黎琉。
「歌音、行こう?」
「あ、ちょ…。」
言い合う2人を余所に、
私は腰に回った楓の腕に引かれて
暖房の効いた教室を後にした。