Diva~見失った瞬間から~
「俺さ、歌音見てると危なっかしくて。
ほっとけない。」
「え、え?」
楓の言っていることが
よく分からなかった。
「俺が卒業したら、
歌音を近くで見れない。
だから、証が欲しい。」
「あ、証…?」
「歌音。」
楓が私を真っ直ぐに見据えた。
「俺が卒業したら俺と結婚して?」
「え……………えぇっ!?」
そ、そ、そ!それって!!
『こんどは、ぼくがかのんに
プロポーズするからさ。ね?』
「か、楓…それって…。」
「プロポーズだけど。」
えぇぇぇえええ!!!!
「何、嫌なの?」
不機嫌な表情を露にする楓。
「嫌なの?」って…
急にプロポーズされたら
誰でも驚くでしょ…。
「もう、
プロポーズの意味はしってるよな?」
『プロポーズ、まだしらないんだね。』
あ…。
「し、知ってるよ!」
『じゃあかのん。
ぼくとやくそくして?』
頭の中の幼い楓は可愛い笑顔なのに、
今私の目の前に居る楓は
当時の楓と同一人物とは思えないほど
大人で妖艶な微笑みを浮かべていた。
「じゃあ何をそこまで驚く必要がある?
俺はちゃんと
あの日予約をしたはずだけど。」
予約…。
『じゃあ、
ぼくとゆびきりげんまんしよう。
かのんがおとなになったら、
ぼくがかのんにプロポーズして、
けっこんする。』
『うん!』
"ゆびきりげんまん"。
"予約"や"プロポーズ"を知らない私に、
唯一出来る契約方法だった。