Diva~見失った瞬間から~
しばらくの間を置いて、
私達は再び歩き出す。
《コツッコツッ》
「……"カナ"って呼ばれんの、イヤ?」
「……え。」
「イヤ?」
質問をようやく理解した私は
慌てて答える。
「あ、いえ…。別に…。」
イヤじゃない。
ただ、戸惑っただけなんだよ。
私のことを"カナ"と呼ぶのは
"彼女"だけだったから。
あまりの懐かしい響きに
戸惑いを覚えただけ。
「……あ、ここで大丈夫です。」
喋りながら歩いているうちに、
目的の駅まで着いた。
蒼空君の家から駅まで、
意外に近かった。
「送ってくださって
ありがとうございました。
天瀬さん。」
流石に電車まで
付き合ってもらうのは悪いと思い、
私は天瀬さんに
感謝と別れの言葉を告げた。