Diva~見失った瞬間から~
「……。」
目の前の彼は、黙ったまま。
「…駄目…かな?」
敬語も意識して取った。
名前を呼んだ。さん付けじゃない。
まだ、駄目な所が有る?
「……いや。それで良いや。
本当は君も付けなくて良いんだけど。」
だから、
呼び捨ては無理なんだって…(汗)。
「カナなら、"葉月君"で良い。」
「そ、そう…?ありがとう…?」
真っ直ぐと見つめられて、
少しどもってしまった。
「……カナ。」
美しい彼…葉月君は、
容姿同様、美しい声で私を呼ぶ。
もう…"カナ"と呼ばれても
あの幻覚は見えなかった。
私の中に、"天瀬葉月"という人物の声が
名前、容姿と共に
インプットされたのだろう。
「……またな。」
「……………うん。」
駅で、私達は別れた。