君への小さな想いを掲げて *my first love*
携帯を押し返していると、不意に反対側の教室のドアが開いた。
顔を上げると、ほうきを持って驚いた表情をした矢杉くんが目に入る。

「高野瀬?…と原田?…え、待ってたの?」

「う…うん」

「奢ってくれるっての冗談じゃねーかって思ってたんだけど…結構マジ?」

「最初からマジだよ、この子は」

私が口を開くより先に呆れた表情の彩が私をちらっと見た。
私は無視して矢杉くんに苦笑いを浮かべる。

「ははは…。何か…私昔っからしつこくて」

「ま、いか。奢ってくれるんだし。お言葉に甘えまーす」

矢杉くんはちょっと笑ってロッカーにほうきをしまった。
すると、彩は私の肘をつついてニヤニヤする。

「な、何?」

「矢杉、意外にモテるから…いい男ゲットしたね希凛!」

「は!?いや、そんなんじゃ…」

「じゃ、私は帰りますわ。2人で頑張ってねー」

彩はそう言って教室を颯爽として出ていった。
何度見てもムカツクな、彩のあの表情は。

「で?何奢ってくれんの?」

「喫茶店でケーキだとか…あ、別にファミレスとかでもいいんだけど」

「んー。喫茶店でいーや」

「あ、うん」

「ちょっと待ってな」

矢杉くんはスクールバッグに筆箱だけいれると、私の隣に並んでニコッと笑った。
可愛い顔とは裏腹に背の高い矢杉くん。
…確かにモテそう。





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