君への小さな想いを掲げて *my first love*
宮野さんはベンチから立ち上がってペコっと頭を下げ、私に駆け寄り、ニコッと笑った。
…可愛いなぁ。

その後ろから戸部山くんも来て宮野さんの隣に並んだ。
なんとなく宮野さんの隣にいるのが気まずいとか思って私は宮野さんの後ろに立つ。

優くんはそんな私を察したのか、私の隣に並んだ。

「…いい奴らだよ?」

「あ、別に苦手とかそーゆうのじゃないから…」

「あ、マジ?俺てっきり苦手何かと思ってた。全くしゃべんねぇし」

「…仲がいい人達の会話に途中から入っていくのは勇気あることだから。私、1人でしゃべって1人で笑っておかしくなっちゃうんだろうなって」

「んー。基本俺1人でベラベラうるせぇからいんじゃね?」

「そーかな?」

「そーそー。だから、俺が1人でベラベラしてたときは希凛助けてな」

「あ、うん」

うつむきぎみだった顔を上げると、前にいる宮野さんと戸部山くんは声が小さいけど結構話していた。

その姿をみて胸がズキンと痛む。

『電車が参ります。危ないですので黄色い線の内側に下がってお待ちください』

痛んだと同時にアナウンスが聞こえてハッとする。
…何でこんな痛むの。
意味わかんない。

『ドアが開きます。ご注意下さい。』

あっというまに電車が来て、風が私の髪をなびかせた。
電車から人がたくさんでてきて、その時、私は見てしまった。

戸部山くんのブレザーをつかんでいる宮野さん。
そんな宮野さんを引っ張るように人混みの中を歩く戸部山くん。

「おわっ!…と。希凛?」

「あ、ごめん」

サラリーマンにぶつかってよろける私を支えた優くん。
ぶつかったことにさえ気付かなかった私って…。




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