君への小さな想いを掲げて *my first love*
暫く沈黙が続いた後、戸部山くんが少し顔を俯かせて呟いた。

「…タイプ?…ひよこみたいにチマチマしてて小さい子。」

微かに、そう聞こえた。
耳はちょっと赤くて、ああ、顔赤くなってるんだなってすぐにわかった。

それを見て、泣きそうになった。
戸部山くんには好きな人いる。

そして、それはひよこみたいにチマチマしてて小さい子。
大体予想はついた。


日和ちゃんしかいない。

泣きそうになったのはそこだけじゃなくて。
日和ちゃんは優くんを好きだから、戸部山くんの想いは届いていないということ。
普通だったら自分の恋で胸が痛むはずなのに。
私は戸部山くんの恋に心を痛めてしまった。

…かなりのお人好しなのか、それくらい、戸部山くんがすきなのか。

まだ良くわからないけれど。

心が痛むのには違いが無かった。

「…高野瀬さんは?」

目がうるうるしてきたときに、戸部山くんはそんなことを聞いてきた。
ここで、戸部山くんみたいなタイプだって言ったら、バレちゃうかな。

「背が高くて、顔がかっこよくて、フレンドリーな…人」

「…そ。」


でも言って気づいた。
私にとって戸部山くんは、今、性格は大人びていて、まるで背が高い人みたいで。
好きになっちゃったせいか、可愛い顔もかっこよく見えて。
無口で無愛想だと思っていた彼は案外フレンドリーで。

結局私は、今私が心の中での彼のタイプを言ってしまっていた。





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