君への小さな想いを掲げて *my first love*
戸部山くんは舞さんから逃げるようにエレベーターに飛び乗った。

エレベーターのドアがしまりかけたとき、おんぶされたまま振り返り、舞さんに頭を下げる。

舞さんは嬉しそうに手を振ってくれた。


「ごめん。変人で。」


「ううん、全然」


笑いながら顔を横に振ると、着いたのか、エレベーターのアナウンスが流れる。

『4階です』

エレベーターのドアが開くと、戸部山くんはエレベーターの横にあった上へ続く階段を登り始めた。


「屋上?」


「ああ。結構景色いーよ」

屋上へ続くドアを開くと、冷たい風がひゅっと私の頬を掠めた。


あ、結構暗くなってきたな。


「…親父。」


「おぉ。光、早かったじゃねぇか。で、患者さんとやらはその子?」


「ああ。」


目の前に、おぶられている私と同じ目線の男のひとが立った。

口にはタバコをくわえている。どうやらこの人が戸部山くんのお父さんらしい。


「初めまして。戸部山医院の院長、戸部山慎二です。話は光に聞いたよ。大変だったね。簡単に傷の手当てと、一応、レントゲンとらせてね。」






< 48 / 93 >

この作品をシェア

pagetop