君への小さな想いを掲げて *my first love*
「あ、こーくん、お父さんいた?」

「ああ。…あ、姉貴、レントゲン頼んでいいか?」

しばらくして、戸部山くんが階段を降り終えると前から舞さんが歩いてきた。

「え?希凛ちゃん、どこか痛いの?」


「痛いっていうか…。不良に喧嘩売ったのでこてんぱんにされちゃって…」


「え!?道理で顔に痣があるのね。私、用意しにいくからこーくん、連れてきて。」


舞さんは慌てて走り去っていく。


「はぁ…。ほんっとギャーギャーうるせぇ」

「え、うるさかった!?ごめ」

「ちがうよ、高野瀬さんじゃなくて、姉貴。」


ああ。
なるほど。


って納得しちゃ駄目だ、私。


「あ、寒くない?」


エレベーターの前に来て、戸部山くんが私をチラリ見た。


「全然!」


「トリハダ、たってますけど」


「え?あ、いや…」


「高野瀬さん、嘘つくの下手。」


そう言って戸部山くんは今までで一番の笑顔を見せた。


私の胸は熱くなるばかり。








< 50 / 93 >

この作品をシェア

pagetop