君への小さな想いを掲げて *my first love*
「ひねくれてんなぁ…。」

トベヤマくんに親しそうに話しかける男子は苦笑いすると、トベヤマくんの隣にドカッと座った。

それを見て、彼とこの車両に移ってきた男女数人も席につく。
トベヤマくんの隣に座ったのは、トベヤマくんよりも小さなチマチマした女の子。

「…あ、トベヤマくん。朝、会うの、初めてだね」

「あぁ…。」

彼女はふわふわとした笑顔でトベヤマくんに話しかける。
話しかけられたトベヤマくんは心無しか、表情が緩んだように見えた。

____ズキン…。

そんな顔を見て、胸が少しだけちくっと痛んだ。
…何だろ。

『次は、○○~、○○~。出口は右側です』

車両に響くアナウンスで私はゆっくり立ち上がった。
ここの車両で立ち上がったのは私だけだったのか、視線が突き刺さる。

…トベヤマくん、もう私の顔覚えてたりしないか。

そう思ったけどやっぱり不安になって、下を向いてあんまり顔が見えないようにした。

だが、トベヤマくんの隣に座っていた男子が私を見てトベヤマくんに何かを囁いているのが見えた。


「…なな、あれって可愛い子多いって噂の藤宮学園のコじゃね?スタイルいい~」

「…どーでもいい。」

彼の言葉を聞いてこちらを見たトベヤマくんは言葉とは裏腹に焦りの表情を浮かべていたように見えた。

『ドアが閉まります、ご注意下さい』

私はその表情を最後に、急いで電車からホームへ飛び降りた。







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