君への小さな想いを掲げて *my first love*
「気になるんでしょ?」

「…。」

「大体その手の女子は気になるから徐々に好きになってくもんなの。だから今から好きつっても後からどーせ好きになんだから変わんないって。」

「そういうもんなのかな。だって私トベヤマくんの事まだ何も…っあ。」

また言ってしまった。

「トベヤマくん?へーえ。トベヤマくんって言うんだー」

「言わないでよ、絶対誰にも!」

「いわないっつの。まー頑張れ。あたしモールよるから先帰ってていーよ」

そう言った彩は手を振って、駅前のモールの中に入っていった。
…頑張れって。
何を頑張るのさ。

まだ気になるってだけなのに。
改札を通り、ホームへ降りるとホームのベンチにトベヤマくんと同じ学校の制服を着た男女が座りながら騒いでいた。

目をこらして見ると、ベンチの一番端にトベヤマくん。
…そして今朝の小さな女の子。

何故か足がベンチの近くの柱まで動く。
さすがに近寄り過ぎたら今朝いたから顔覚えられてるし、まずいよね。

そう思いながら横目でチラチラとトベヤマくんを盗み見た。
…何でこんなことしてんだろ、私。

「トベヤマくんってさ、甘いもの好き?」

「え?…あぁ…」

「じゃ、はい。キャンディー。電車待つの暇だから一緒に食べよう?」

女の子はトベヤマくんに近づいて、キャンディーをトベヤマくんの口の中に放り投げた。
…あんなに仲いいし…。
彼女なのかな。

気になってもう1回チラ見をすると。
見事にキャンディーを舐めていたトベヤマくんとばっちり目が合う。
私は焦りを悟られないように、トベヤマくんの座るベンチの向こう側に立つ、黒髪の制服男子に目を移した。





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