イズミの主義
「来たのは待ってたらダメだと思ったから、帰る」
「ちょっと」
そう言ってわたしの腕をつかむ
「泉は来ただけ?
んじゃ、ここからはオレの思うようにする」
「えっ?」
そのまま歩き出す桐原
「ちょ、ちょっと」
そんな声はもう桐原には届かない
電車に乗ると逃げるのをあきらめたわたしを悟ったのか、桐原のわたしの腕をつかむ力が弱まった
「わたしこんな格好だしイヤだ」
いつものショートパンツにサンダル…
周りの女の子の浴衣姿に自分がとても醜く感じる
浴衣着たらよかった…
「財布も何にも持ってきてないし」
「泉はそんなこと気にしなくて良いの」
もっと可愛くして財布もタオルもティッシュも持ってきてちょっとでも良く見せたかった…
って、別に桐原じゃん
なに考えてんのわたし…
「はい、手」
そう言ってキレイな手が伸びてくる
「はぐれるから」
そう言って半ば無理やりつながれた手…
もう抵抗なんてできない
素直に手をつなぐ
だんだん熱くなる右手…
そんなわたしをみて満足そうに笑う桐原
わたしはそんな桐原から慌てて目をそらす