イズミの主義



「泉、大丈夫?」



軒にたどり着いてやっと雨から逃げられた



「大丈夫」



そんなことよりわたしはまだ繋がれている手が気になって仕方がない




「花火中止らしーぞ」


そんな声がどこかからか聞こえて来る




中止かぁ…


別に見に来るつもりじゃなかったけどここまで来たんだから見たかったなぁ



軽く落ち込む


何気なく向かいの軒で雨宿りしている人たちに目を向ける









…え








……智樹だ…





その姿を見て思わず桐原の手を離す




智樹の隣には前の女の子…


女の子の濡れた浴衣を優しく拭いてあげている




こんなの見たくなかった…




未練なんかじゃない


ただ信じてた自分が情けなくなって


もう誰も信じないでいようって醜い思いが大きくなる



それにこうやって桐原といることが智樹と同じことしているみたいで自分が嫌になる





「ねぇ、ちょっと濡れるけど移動しよ。オレいいとこ知ってるから」




そう言って桐原はわたしの右手を優しく繋ぎ直す


そしてまた雨の中に入っていく
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