イズミの主義



「遅せーんだよ」




家の前には桐原が立っていて




「帰るだけでどんなに時間かかんだよ」




ヨユーの表情でそう言う




「なんでいるのよ」




「買い出し」




「行けないって言ったでしょ」




「オレなんかした?」




「え?」




「昨日から様子変だし、今日とか目も合わせねーし」






「…何にもない」




「それ、オレの目見て言って」



すると桐原はわたしを壁に押し付け


手を掴む




「や、やめてって」




「なんで避けてんの」




桐原から目をそらし、靴を見る




あ、わたしまた下見てる


あん時と一緒じゃん…




ヤダ、こんな自分






「そういう自分勝手なところほんと嫌なのっ

もういい加減にしてよ…」




「…」



すると掴まれていた手は解放され



わたしのすぐ前にあった桐原の靴は、私の視界に入らなくなった



何言ってんのよ…





「わかった、迷惑かけたな」




わたしをまっすぐみてそう言うと、後ろを振り返り帰っていく桐原





その後ろ姿がだんだん、にじんでくる





わたし、自分守るために桐原傷つけたんだ…





自分勝手なのわたしじゃん






胸が苦しくて苦しくて胸が痛い





なんでこんなに苦しいのよ…










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