イズミの主義
その日から桐原とわたしの関係は
ガラッと変わった
「これ、先生から預かってたプリント」
「あ、はい」
実行委員長として必要な業務的な会話しかしない
「成瀬さん、体育祭まであと一週間しかないから、これから放課後は当日の進行練習しようと思うんだけど?」
「そ、そうだね」
そしてわたしを『成瀬さん』と呼ぶ
「望月先生、これわかんねぇー」
「おぉー、どれだ」
「…」
もちろん塾でもそれは変わりなく
「成瀬さん、ばいばい」
「ば、ばいばい」
別に無視されてる、怒っているとそんなんじゃないんだけど…
だからこそ桐原に何にも言えない
だってこれがフツーの関係でしょ…?
そして
「桐原くん!!」
笠木さんがよく桐原の隣にいるようになった
「…」
わたしはそれをただ見てるだけ
そしてたまに後ろを振り返った笠木さんにニコッと笑われる
もちろんその笑顔は親善なるものじゃないことぐらいわかってる
これでよかったんだよ…