イズミの主義




とても嫌な予感…




「明日の体育祭に急きょ教育委員会の役員さんたちがいらっしゃることになってな、何の用意もしてないんだよ」




「は、はぁ…」





「それで、出すお茶もお菓子もなくて買ってきてほしんだ。先生たちは今から会議でな…」





「は、はぁ」




「悪いな、おつりでジュースでも買ってくれ」





そう言って先生はわたしにお金を握らせると走って行ってしまった





その一部始終を見ていたのに笠木さんは




「桐原くん、早く帰ろっ」




なんだかとてつもなく苦しい…悔しい…




こんな弱い自分が嫌だ




こんな人に何か言われるのが怖くて自分を抑えてバカみたい




わたし何してんだろ…





目の前がぼやけてきた





出てくる涙をぐっとこらえて足を進める





その時



っ???






右手をつかまれて





「成瀬さん、買い出し行こっか」



そう言ってニッコリ笑いかける桐原…




バカだと言われるのはわかってる




けど





けど




ほんとにこのとき




王子様だって思った
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