イズミの主義




「泉、おはよう」


「お、おはよう」




でも桐原に会ったら言い聞かせたのも一瞬でどこかに行ってしまう




そして一瞬で体中が桐原になる





「持つよ、行こうか」



何気なく荷物をわたしから奪い




「泉、こっち」



何気なく車道を歩く



そんな一つ一つが好きを積もらせる



好きな人が優しいだけでこんなに幸せな気持ちになるんだ…






『2番乗り場に電車が参ります。電車が参ります。ご注意ください』




聞き慣れたアナウンスも、見慣れたホームもなにもかもが新鮮に見える


わたしってだいぶ単純なんだね





今までこんな気持ちなったことなかった


好きって気持ちはきっと今のわたしの気持ちを表してたんだね…





「おぉーー、電車来たぞ

今日も人多いな」



「そうだね」



大嫌いな満員電車も今日はキラキラして見える




ヤメロヤメロ、自分。乙女すぎるぞ




「どうしたの、首なんか振って」


イタズラに笑ってくる桐原




何もかも見透かされているみたいで慌てて目をそらす



「なんにもない」



あーあ、なんてかわいくないんだろうか
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