コンパス〜いつもそばで〜
受け取った封筒には、差出人の名前も何も書かれていない。
「あっ、それ、前田さんから」
「え?おいっ、タカシっ!」
逃げるように一言そう言ってシャワー室へと入ったタカシに声をかけても返事は返ってこない。
いつもなら、手紙を受け取れば寮に帰って読むけれど、タカシの言葉に指が動く。
タカシの言う“前田さん”が、本当に彼女なら……
封筒に一ヶ所糊付けされている部分を人差し指で、丁寧に破らないように剥がす。
なんでだろう
緊張する。
二つ折りの手紙を開けると、そこには、懐かしい見慣れた彼女の文字
「前田……」
そこには、前田の言葉が溢れていた